愛の深さに溺れる



「もう二度と会いたくないです。その顔も見たくないです」

凄い嫌な顔をされそう言われたけど、それはこちらも同じなわけで。


「俺もだよ」


そう言うと彼は逃げるように店から出ていった。
さて、残りのコーヒーを飲むとしようか。


「俺が怖い、ね」


たまたま寄った映画館で海老塚さんを見つけ、彼女がその映画館の常連で映画好きであることを知るとその映画館に通いつめた。


彼女は決まってレイトショーの時間に映画を観ることは知っているからその時間に合わせて映画館に行き、同じチケットを購入し、通うにつれて彼女の映画の好みを把握する、そして彼女が観るであろう映画をピックアップしていく。


彼女は決まって後列の真ん中あたりを好んで座ることが多いから、その近くを俺は取られる前に取る。


彼女に気づいてもらって彼女に近づき、彼女に声をかけ少しずつ距離を詰めていった。


邪魔が入ればそこを排除するのはもちろんのこと。

そして彼氏というポジションを勝ち取り、今度は旦那というポジションを取るのが次の目標。


これの何処が怖いというのだろうか。


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