愛の深さに溺れる
「え、また?」
「えぇ、またです」
彼にとっては私が映画によく行くのは“また”らしい。
いつ行こうが、何度行こうが私の勝手だというのに。
「ですので、お疲れ様でした」
「ちょ、ちょっと待ってっ」
頭を下げ背を向けようとしたら、安田さんに肩を掴まれた。
「なんでしょう?」
「その映画、俺も一緒に行っていいかな?」
「え…」
「俺の、俺の奢りでっ…」
奢り……その言葉にはめっぽう弱い私。
それを知ってか知らずか彼は口にした。