アンブレラ
「日曜日、デートしない?」
次の日の朝、まだ眠気の取れない頭のまま教室に入ると、子犬のように菜穂が近寄ってきた。
教室がざわついたのは気のせいではないだろう。
なんで?
えっ、マジ!?
あの2人、付き合ってるの?
眠気は一瞬で吹き飛んだ。
菜穂も俺も、気軽に異性に近づくタイプではない。
菜穂は吹っ切れたのだろうか。
周囲の視線は気にしていない素振りで、俺を見上げている。
「日曜日、都合悪い?」
「あー…バイトが入ってる」
「バイト?」
そういえば話してなかった。
菜穂は俺に自分のことをメールで教えてくれるけど、その逆はなかった。
「家の近くのコンビニでやってる」
「そうなんだ…それなら仕方ないね。残念」
菜穂は笑ったけれど、眉間の小さな皺が、彼女の本音を表しているようだった。
菜穂は「またね」と言って、去ろうとした。
「待って」
俺は呼び止めていた。
菜穂は振り向いた。
「でも、15時にあがるから。それからでもいいなら」
「ほんと?」
「うん。中途半端な時間だけど」
「全然いい。待ってる」
「行きたい所、あるの?」
「ファミレス!」
間髪入れずに答える菜穂に、俺は笑ってしまった。
「お前、ガキかよ」
「今、スイーツフェアやってるの。これは小田切くんと行かなきゃと思って」
「俺、別に甘いもの好きじゃないんだけど」
「小田切くんの1番好きな食べ物は何?」
「タンドリーチキン」
「じゃあタンドリーチキンを食べればいいじゃない」
ファミレスでのデート。
そんな安上がりな約束が決まっただけで、どうしてそんな嬉しそうに笑うんだよ。
教室中の視線を浴びているにも関わらず、菜穂は機嫌良く自分の席に戻っていった。
どうして平気でいられるんだろう。
どうして俺は菜穂を呼び止めたんだろう。
菜穂は何も悪くない。
正攻法だ。
だけど今はその純粋な思いが眩しく、鬱陶しかった。
次の日の朝、まだ眠気の取れない頭のまま教室に入ると、子犬のように菜穂が近寄ってきた。
教室がざわついたのは気のせいではないだろう。
なんで?
えっ、マジ!?
あの2人、付き合ってるの?
眠気は一瞬で吹き飛んだ。
菜穂も俺も、気軽に異性に近づくタイプではない。
菜穂は吹っ切れたのだろうか。
周囲の視線は気にしていない素振りで、俺を見上げている。
「日曜日、都合悪い?」
「あー…バイトが入ってる」
「バイト?」
そういえば話してなかった。
菜穂は俺に自分のことをメールで教えてくれるけど、その逆はなかった。
「家の近くのコンビニでやってる」
「そうなんだ…それなら仕方ないね。残念」
菜穂は笑ったけれど、眉間の小さな皺が、彼女の本音を表しているようだった。
菜穂は「またね」と言って、去ろうとした。
「待って」
俺は呼び止めていた。
菜穂は振り向いた。
「でも、15時にあがるから。それからでもいいなら」
「ほんと?」
「うん。中途半端な時間だけど」
「全然いい。待ってる」
「行きたい所、あるの?」
「ファミレス!」
間髪入れずに答える菜穂に、俺は笑ってしまった。
「お前、ガキかよ」
「今、スイーツフェアやってるの。これは小田切くんと行かなきゃと思って」
「俺、別に甘いもの好きじゃないんだけど」
「小田切くんの1番好きな食べ物は何?」
「タンドリーチキン」
「じゃあタンドリーチキンを食べればいいじゃない」
ファミレスでのデート。
そんな安上がりな約束が決まっただけで、どうしてそんな嬉しそうに笑うんだよ。
教室中の視線を浴びているにも関わらず、菜穂は機嫌良く自分の席に戻っていった。
どうして平気でいられるんだろう。
どうして俺は菜穂を呼び止めたんだろう。
菜穂は何も悪くない。
正攻法だ。
だけど今はその純粋な思いが眩しく、鬱陶しかった。