アンブレラ
菜穂を馬鹿にする声も聞いた。

そのほとんどが菜穂では亜梨紗の代わりにならないという内容だった。

エスカレートしたものの中には、菜穂には、そのおとなしそうな外見にそぐわない、性的なテクニックがあるのでは、と揶揄された。

何を言われても、菜穂は笑っていた。

みんな、そんなに面白いのか。
そんなに俺は惨めなのか?
そんなに菜穂は滑稽なのか?

どうしてみんな、他人の恋愛で、そんなに笑えるんだ?

菜穂と付き合わなければ良かったと、今になって思った。
そうすれば菜穂も俺もこんな思いをせずに済んだのだから。

菜穂からは毎日、メールが来た。
最初から変わらない、夕食後、自室で明日の予習をしている頃に来た。

メールがなかなか来ないと、携帯電話を意識するようになった。習慣は怖い。
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