アンブレラ
教室に戻ると、いつも一緒に昼食をとる山下と新海が微妙な顔で、俺を迎えた。
「?ごめん、遅くなった」
とりあえず俺は謝る。
山下と新海は2年になってからクラス内で知り合って、今の仲になった。
まだ、友達と呼べる程ではない。
でも、この2人は居心地がいい。
亜梨紗のことも、菜穂と付き合っていることも必要以上に詮索してこない。
「小田切、あれ」
山下が顎を斜め上に傾ける。
「何?」
「橘だよ」
俺は菜穂のほうを見た。
自分の席で、菜穂はひとりで弁当を食べている。
いつも一緒に食べている女子はどうしたんだ?
菜穂から聞いていた、その友達は瀬戸花枝といって、1年の時からの親友だと。
2年になってクラスが別になったが、変わらず仲良くしていると。
山下はエビフライを咀嚼している。
「瀬戸、休みだって」
「……」
このクラスの女は冷たいな。
幾分、噂は収まったものの、菜穂はまだ他の女子から距離を置かれているように見える。
こういう時は男より女のほうが態度に出る。
菜穂と仲良くしたら自分まで色眼鏡で見られてしまう、それは厄介だという理由で見切りをつけるのだ。
俺は山下と新海に助けられている。
でも、菜穂は?
俺の知らないところで、親しくなれそうだった相手が離れたかもしれない。
今まで一度も考えなかった。
「橘、最近、綺麗になったよな」
ずっと黙っていた新海が言った。
その言葉に、なぜか胸の奥が熱くなった。
元々、新海は無口なほうだ。
だけど、時々発する言葉に重みがあるし、勘が鋭い。
「少し痩せたし、無駄に注目されてるせいかな。前よりゆるさがなくなって、緊張感がある。それが綺麗に見えるのかも」
俺も同じことを思っていた。
俺しか気づいていないと勘違いしていた。
知り合った頃より、菜穂は綺麗になっている。
新海の他にも同じことを思っている奴はいるのだろうか。
「ごめん、行ってくる」
俺は言った。
謝ることじゃねえだろ、と山下が笑った。
「?ごめん、遅くなった」
とりあえず俺は謝る。
山下と新海は2年になってからクラス内で知り合って、今の仲になった。
まだ、友達と呼べる程ではない。
でも、この2人は居心地がいい。
亜梨紗のことも、菜穂と付き合っていることも必要以上に詮索してこない。
「小田切、あれ」
山下が顎を斜め上に傾ける。
「何?」
「橘だよ」
俺は菜穂のほうを見た。
自分の席で、菜穂はひとりで弁当を食べている。
いつも一緒に食べている女子はどうしたんだ?
菜穂から聞いていた、その友達は瀬戸花枝といって、1年の時からの親友だと。
2年になってクラスが別になったが、変わらず仲良くしていると。
山下はエビフライを咀嚼している。
「瀬戸、休みだって」
「……」
このクラスの女は冷たいな。
幾分、噂は収まったものの、菜穂はまだ他の女子から距離を置かれているように見える。
こういう時は男より女のほうが態度に出る。
菜穂と仲良くしたら自分まで色眼鏡で見られてしまう、それは厄介だという理由で見切りをつけるのだ。
俺は山下と新海に助けられている。
でも、菜穂は?
俺の知らないところで、親しくなれそうだった相手が離れたかもしれない。
今まで一度も考えなかった。
「橘、最近、綺麗になったよな」
ずっと黙っていた新海が言った。
その言葉に、なぜか胸の奥が熱くなった。
元々、新海は無口なほうだ。
だけど、時々発する言葉に重みがあるし、勘が鋭い。
「少し痩せたし、無駄に注目されてるせいかな。前よりゆるさがなくなって、緊張感がある。それが綺麗に見えるのかも」
俺も同じことを思っていた。
俺しか気づいていないと勘違いしていた。
知り合った頃より、菜穂は綺麗になっている。
新海の他にも同じことを思っている奴はいるのだろうか。
「ごめん、行ってくる」
俺は言った。
謝ることじゃねえだろ、と山下が笑った。