アンブレラ
菜穂の言ったとおり、午後の授業が終わった頃には雨が降り出していた。

昇降口は帰宅する生徒で混雑していた。

未だに学校内で菜穂と2人で歩いていると、絡みつくような視線を感じる。

だけど、以前よりは減っている。
菜穂は何食わぬ顔で笑っているし、それは賢い対応に思えた。

俺も菜穂だけを見ていよう。

そうすれば、いつか、誰からも飽きられて、注目を浴びた今を過去として笑えるようになる。

傘立てを見下ろして、菜穂は自分の傘を探している。
その顔が可愛いなと思った。

俺は普通の男だから、菜穂の体にも興味がある。

菜穂の丸みのある肩や、制服の胸元、スカートから伸びた足をつい見てしまう。

きっと菜穂はそれに気づいている。
どうか菜穂にとって不快なものになっていないように、そう願う。

緑と黄色のチェック柄の傘。

俺が見つけて、その傘を持ち上げると、それを見た菜穂は微笑んで頷いた。

その瞬間、菜穂の顔が強張った。
菜穂の怯えたような視線を辿り、俺は振り向いた。

亜梨紗がいた。
そして、その横に長身の男が立っていた。
菜穂と俺と同じクラスの岩澤大樹(いわさわだいき)だった。
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