アンブレラ
白崎亜梨紗(しらさきありさ)は学年でも指折りの美少女だった。
色白の小さな顔に、猫のように少しつりあがった目、通った筋の鼻、血色の良い小さな唇が、完璧な形でまとまっていた。
ストレートの長い髪は染めることはしない。その黒髪は彼女の凛々しさを際立たせた。
170センチの長身、ほっそりとした長い手足、まるで2次元の世界から飛び出してきたような美しさだった。

明るくて、言いたいことははっきり言う、よく笑う。亜梨紗の笑顔は周囲を魅了し、圧倒した。その場が健全で正しいのだと誰もが安心した。

その一方で、亜梨紗には壁があった。一定のその先は踏み込んではならないと思わせる壁。亜梨紗だけの世界。彼女に自覚はなかった。
そのためか亜梨紗には親友と呼べる相手がいなかった。しかし、特別な孤独を感じているようには見えなかった。
むしろ、普段の愛くるしい少女を演じる疲れを、
その世界で健気に流しているようだった。

付き合っていた俺にはそう見えた。
でも、きっと間違っているのだろう。
俺は亜梨紗に振られたから。
それは亜梨紗を正確に理解していなかったということだと思う。

オープンでミステリアス。
その孤高な存在は、満月より少しだけ欠けた月に似ていた。
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