【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ

 しかし、今日のドレスコードに、仮面をつけるという文言はない。

 招待客は、傍から見れば仮面をつけていない。かといって、シルウィンが酒乱で、生き物みんなが道化に見えてるわけでもなければ、彼女がおかしな薬を飲んでいるわけでもない。

 ただ、シルウィンにとって、周りの人間は仮面をつけているように見えているということだ。それは、みんな姿を偽っているという抽象的な意味合いでも、物理的にそう見えているという直接的な意味合い、どちらも正しい。

 単刀直入に言えば、シルウィンには嘘が見える。例えばある令息が「別にお前なんか好きじゃない」などとある令嬢に言ったとする。しかしその令息の令嬢への感情が、言葉とは反対の場合……照れ隠しで嘘を吐いていた場合、シルウィンにはその令息が、例え絶世の美男子であっても、真っ白で、ただ笑いの顔を適当につけたような仮面をつけているように見えるのだ。

 それは、シルウィンの完全なる生まれつきによるもので。始まりがいつかは彼女にすら分からない。ただ、シルウィンが言葉を覚えていくと同時に彼女は両親に自身の能力について訴えた。
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