【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ

 どんな人間であっても、目の前の人間が、使用人が、茶会であった他人たちが、そして家族ですら突然仮面をつけるのだ。それは幼い彼女を取り囲む環境にしては異常すぎた。

 シルウィンが両親に訴えると、彼女の両親は心配し医者へと診せた。すると医者は、戦帰りの軍人によくある症状で、目をぶつけたり異物が入ったり、強い光を受け知らないうちに目が傷つき、蠅が飛んでいたり、何かが霞がかったようにして見えることがあり、シルウィンの症状もそういった病気の類という診察をした。

 以来シルウィンは物が見えづらいのだろうと周りから配慮はされど、正体不明の人間が仮面をつけて見える現象については放置されるという生活を送った。そうして過ごす中、シルウィンは医者の診立ては間違っているという確信を漠然と持っていた。

 なぜならシルウィンは戦に行ってないし、目だってぶつけていない。強い光だって浴びていない。それを自覚していたからだ。

 結局シルウィンは正体不明の仮面をつけた人々と暮らすことを余儀なくされた。たまに彼女の家族も仮面をつけることがあり、シルウィンはそれはそれは恐怖した。普通なら、きっと心を閉ざしていくだろう。当時シルウィンは五歳だ。人と距離を取ろうとしてもおかしくはない。

 しかし彼女はある目的の為に人との距離を詰めに詰めていったのだ。それは仮面の正体を突き止めようと決め、あらゆる記録をつけ始めたからだ。
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