青春の花は素顔に咲く


「芽以はこの色のほうが似合うわね」

 お母さんがそういうなら、そうなのかもしれない。

「これは芽以には合わないわ、こっちのほうが」

 お母さんがそういうならそうなのだと思う。

「ねぇ、芽以。芽以にはこれのほうがいいんじゃない?」

 お母さんが、そういうなら。

「夢……」

 小さなころの夢だった。子供の頃のあたしは主体性がなくて。
 自分に自信がなかったから、すべてお母さんにゆだねていた。

 

(……ゴスロリを着るまでは)

 本当に、あたしにとってのゴスロリは魔法の服で。

 どんな特攻服よりも特攻服で。

(あたしと違ってお母さんは派手な顔の美人だしね)
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