青春の花は素顔に咲く


「おかえりなさい、芽以ちゃん。早く着替えて」
「え? おばあちゃん?」
「もうすぐお母さんが帰るからね。着替えてお待ち」
「……うん。そうだね、この服じゃまずいよね」
「あの子はそういうところ堅いからのぉ……せっかく似合ってるのにねぇ」
「しかたがないよ、おばあちゃん」

 憂鬱な気持ちになりながらあたしはメイクを落とし、地味な服に着替える。
 久しぶりの普通の服にナチュラルメイクに落ち着かない。
 ソワソワどころかぞわぞわする。めまいもする。だけど。

(お母さんが嫌がるし、我慢だよ)

 あたしは所詮お母さんたちに養われてるんだから。
 嫌われてしまうわけにはいかない。

 住む場所をどうにかする力はあたしにはないんだから。
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