青春の花は素顔に咲く

 
「ここはどこだ」
「起きたの、白銀。ここはあたしんちだよ。マネージャーさんに連れてきてもらったの」
「……黒野んち」
「一人にしておけなかったから……ごめんね。勝手に」
「……すまないな」

 目の下を真っ赤にして、白銀はまた、笑った。

「ねぇ、白銀。無理に笑わなくていいよ」
「わかんねぇんだ。元の自分が、わかんねぇんだ。『白銀カケル』ってどんなやつか、わかんねえんだよ。他人には自分らしさを褒めれるくせに、オレが一番わかんねぇの」
「…………」
「馬鹿だろ」
「そんなことないっ」
「お前、オレのこと好きだったろ」
「今でも好きだよ」
「作り物のオレが好きだっただけだろ。『いいやつ』だったしな」
「…………」

 ちがう。そう言いたいのに、言えなくてあたしは押し黙る。
 どうすれば白銀を励ませるのか、わかんなかった。

 白銀の夢は、途方もない願いに思えた。
 叶う事のない、夢を、どう手伝えばいいかわからなかった。

 生きる支えを失った白銀を、支える力はあたし後時にあるのだろうか。

 あたしは無言で飲み物を白銀に渡す。それぐらいしか、できないから。
 白銀の望む答えが、どこにもないように思えて。

 終わりのない迷宮に迷い込んだ気分だった。
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