青春の花は素顔に咲く
「黒野に出会えて、楽しかった」
「え?」
突然の白銀のつぶやきに、あたしはびっくりして声を上げた。
「けど、もしオレが本当のオレだったら、お前、オレに笑いかけてくれたかもわからないよな」
「そんな、こと」
「だってわかんねぇんだもん。オレ、本当ならどう接していたかも、想像すらできねぇの。馬鹿だろ……俺はずっと群像を演じてただけで、中身は両親が元気だったあの頃に置いてきたんだろうな」
「…………」
「帰りたいよ、あの頃に帰って、二人に抱きしめられたい」
「……うん」
「こんな似てもない子供を愛してくれた、両親が大好きだった。両親もオレを大好きでいてくれたのに。なんでだろうな。やっぱりおかしな姿のオレじゃ……普通の人生はふさわしくなかったから、こうなったのかもしれねぇな」
「っ」
「黒髪で、黒い瞳の日本人顔なら……その他大勢になれたのかな」
「白銀……」
「鏡に映る自分すら、むかつくんだ、そう思うと」
誰もが美しいと、素敵だとたたえた、国民アイドルの白銀。
それほどまでに美しい姿は、誰もが変わりたいと望むだろう。
だけど、本人にとっては、その他大勢のほうがまぶしかったのだ。
皮肉すぎる。自分の一番嫌いな部分を、皆に愛された白銀……。
そんな自分を、好きになれ、なんて、無茶だ。
あたしの白銀への気持ちだって、見た目について関係ないわけでもない。
中身が好き、と言ってもどこまでが本質かもわからない。
だけど。