青春の花は素顔に咲く
「うん! お姫様を見てるだけでみんなが幸せになる、魔法」
「……そんな、の、できない」
「だってすごく綺麗だもん。キラキラの髪の毛に海のような眼」
「……みんなと、ちがうの」
「それがいいんだよ! かっこいいじゃん」
「かっこ、いい? ぼくが?」
「すごくかっこいい!」
目をぱちくりさせてお姫様。
考えれば、一人称は最初から男の子のそれだったんだけど。
あの見た目じゃ、女の子にしか見えなかったんだよね。
服は確かにいつも男の子の物ではあったんだけど。
それでも、そういう服が好きな女の子はいるし。
わかるわけがない。それぐらい、浮世離れした美貌は昔からで。
「ぼく、てれびのお仕事してる」
「すごいじゃん! あたしの家にはないけど」
「ないの」
「うん!」
「芽以ちゃんに見てもらいたい」
「お金持ちになったらテレビ買うから、そのときね」
「本当?」
「ん!」
「じゃあ、その時までにぼくいっぱいてれびに出れるように頑張るから……」
「頑張って!」
モジモジするお姫様はあたしをじっと見た。
不思議に思って、あたしはお姫様を見つめた。
「なあに?」
「だから、待ってて。ぼく、また芽以ちゃんとお友達になりに来るから」
「うん! ずっと待ってる」
「約束だよ」
(……そこで指切りして別れる前にお手紙を書いたんだ)
思い出した、あの頃の記憶。
なぜかあの後、お姫様は現れなくなって。
またあたしは独りになったんだ。
懐かしくて切ない、子供の頃の思い出。