風鈴が鳴る頃に
 この街で暮らす最後の1週間は
    寂しいくらいに
あっという間に過ぎ去ってしまった


隼人を中心にクラスのみんなが
お別れ会をしてくれたのが

とても嬉しくて、悲しくて、

涙ぐみながら
学校まで迎えに来た
白のワゴン車に乗り込んだ



「お別れはできたかい」


運転席と助手席には父と母が、

後部座席には
妹の“つむぎ”が顔をのぞいてくる


つむぎが小さなポシェットから出した

甘い香りのついたキャラクターの

ポケットティッシュを一枚くれた

「あい、あげる」

僕は香りにホッとしながら涙を拭った


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