青のせいんと
 そのシロツメソウ、名をせいんと、春の咲き出でから今年で百年は経つ神霊だ。神霊のシロツメソウは珍しい物で、せいんと以外は余り垣間見える事は出来ない物だそうだ。
 少女の名を姫子、まるでその笑顔、春の桜の木の精だ。
 そして男の子の名をひじり、左利きの美男子だ。二人の目は灰色をしていてそれは猫にも似ていた。
 じゃれ合う姿は、両親に精姫、聖と呼ばれた。姉弟では無く、いずれも美形だ。年若く不思議な経験もあるそうだ。
 此れはその一説である。一人きりのせいんとは、何をするでも無く愛する人を探すでも無く、歩けるでも無く、百年彼は一人ぼっちだった。してある日の朝、せいんとは旅をしようと思い、何と決行した。
 何でも青のせいんとの頬をピンク色に染められる者はいないのかと考え抜き、恋では無い方が面白いかなと思ったそうだ。
 四つ葉を探す少女と少年をふと思い出したりした。シロツメソウの王国では愛する人に捧ぐと言う昔話、女の子が男の子に捧ぐ場合は愛、男の子が女の子に捧ぐ場合は被れる様に捧ぐと言う。
 思い出せない程懐かしい話だ。四つ葉探しを楽しみにしているせいんとは、誇れるなあと溢した。四つ葉を探してかけずり回った。少女は目を美しくも探していた。懸命にも探し、膝を擦り剥いた。
 頭を上げると、俺が立っていた。少女の伏せた瞳と目が合った。大丈夫ですか。俺は王子の格好をしていた。
 四つ葉を一つ、持って立っていた。少年も走って来た。急に世界が変わった様に見えて、少年は消えた。
 何だったのだろう。少年はそう言った。一様に周りのシロツメソウがピンク色なのに気付くと、少女の頬は紅潮した。
 何だ、何だよ、せいんとが出たか、有名な話だった。少年は翌朝シロツメソウの草原に寝ていた。
 みんなに心配されて帰っていった。シロツメソウの草原には神霊が時々出て、せいんとの仕業だった。
 青いシロツメソウで、今でも一等美とされる。その年端は十九歳で、絶世だったとされる。その美しさに惚れ込むと現れ、子供を好むそうだ。その為迫害され忌まれ、一人追い遣られた美男だ。
 懐かしい話で、せいんとは顔をピンク色に染めていたねと言った。
 灰色の目の少年に祈った。俺は今日は神に見えましたか?答え等帰っても来ず、四つ葉もありはしない。
 本当のところは明日も少年と出掛ける事だけ、いずれも思って口にする事だけだろう。せいんとは一人なのかしら。死んでも一人にしないであげて下さい。
 後、青いシロツメソウも一輪咲かせてあげて欲しいです。青のシロツメソウの笑い声が響いた気がして、その後鶏が泣いて朝が来た。そして姿を隠してあげて下さい。何の変哲もない一日が始まる。
 いつもより遥かにー、遠い国での事、青のシロツメソウは四つ葉みたく珍しいそうだ。
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