昨日までを愛せますように。
歩道を無言のまま歩き、なるべく人通りの少ない場所へと移動した。

「話って何!?私には話す事なんて、何一つないよ!」

男を睨みつけながら言い放った。

「……謝りたかったんだ、……ずっと。……スマホにかけても解約してるし、住んでる場所も分からなかったし……ごめん、本当にごめん。……もうあんな事はしないから、戻って来てくれないか?」

「……戻る訳なんてない!どれだけ、私が我慢してきたか分かる?分からないでしょ?」

つい大声を張り上げてしまった。

この男とは前の会社の同僚で、花見の席で気が合った延長線上から付き合うようになり、ついこないだまで同棲をしていた。

酒を飲まなければ、気さくで優しい男。

泥酔してしまうと、暴力が絶えなかった。

いわいるアルコール中毒症なんだろう……。

お互い酒は好きで、毎晩二人で飲んでいた。

二人きりの時は何も起こらず、楽しい雰囲気のまま、眠りにつく。
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