昨日までを愛せますように。
最悪なのは外での飲み会だ。

必ずと言ってよい程、自宅に帰るとまずは私に言い掛かりをつけ、殴る、蹴るを繰り返した。

そんな日々は一度だけではない。

会社の飲み会や同僚と飲んで帰って来ると、決まって毎回。

『いつかはきっと……』などと、私は男が更正してくれる事を祈っていたが、無理な問題だった。

病気なんだ……と理解はしていたつもりだったが、私にも精神の限界はある。

男に殺意が芽生えたのだ。

投げつけられた、グラスの破片で喉元を刺してやろうと思った。

破片を手に握り、破片が皮膚の皮を破り、次第にくい込んでいく。痛みさえも忘れる程に怒りが増し、血が滲む手を振り上げた瞬間、ふと頭の中によぎった。



『この男を殺しても、罪に問われるだけで、一生、この男にとりつかれるだけ』
だと───────



人通りは少ないが、通り過ぎる人達からジロジロと冷たい視線を向けられる。

『痴話喧嘩かよ……』という冷めた目つきで……。

「……せめて、番号だけでも教えてくれない?」

……いい加減しつこい。
< 5 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop