王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
 兄に男の恋人がいると思うことで、虎の背負ったものが軽くなるのなら、誤解させたままでいいじゃん。
 息子がゲイだったなんて。
 当面親にも言えない秘密は、おれひとりの胸に収めておけばいい。
 あとは町田に退場してもらって……。
 うん。
 おれはうそがつける。大丈夫だ。
「ねぇねぇ兄ちゃん。聞いてからにしようと思ってたんだけど――。一海(ひとみ)さんのアドレスかIDもらっていい? おれ初めてなんだ、ゲイのひと。聞きたいことも聞いてもらいたいことも、いっぱいある」
「…………」「…………」
 安心しろ町田。
 おまえは離脱させる。
 うなづいてやると町田もうなづいた。
「おれSNS始めたばかりで、よくわかんなくて。――どうやればいいの?」
「…ごふぉっ」
「わーい」
 かぶりついていたチーズバーガーを吐きだす勢いでむせたおれの目の前に、2台のスマホ。
「ごふ…、…っら、……ッ、ごふごふ」
 やめんか、町田! が言葉にならない。
 なに考えてやがる。
 状況は把握してるだろ。
 部外者にしてやろうしたおれの温情を無下にするな。
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