王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
「他に――なにされてる。まさか…夏期講習の金も――取られてんのか!」
「ぇっ、ぇっ、ぇっ」
「応えろ! どのくらいこのアホを、のさばらせてんだ!」
怒りで足が出た。
おれはかわいそうな弟の身体を蹴った。
ひとりで死にたいほどの絶望を抱えてきた、かわいそうな、まぬけ。
「虎っ。虎…っ」
でも泣いてくれたから。
これからはどれほど傷つけても、きちんと抱きしめてやれる。
おれが両腕を差し出すと、虎は素直に腕の中に入ってきた。
「ぅわぁぁぁあああああ――ん」
「うん…、うん…」
赤ん坊の頃から泣けばそうしてやったように、頭をなでた。
どうしたら仕返しができるか。
〔親がいるので出られません明日なら〕
虎の代わりに返信しながら、頭のなかを渦巻いていたドス黒い暴力の衝動は根性で消す。
おれが汚れたら、虎が泣けない。
王女さんが虎に届かない。
「兄ちゃん……、にぃ、ちゃ…ん」
しがみついてくる虎をあやしながら、そのメールを受け取った。
〔だったら数学のペーパーも仕上げてこいよ 2時に駅〕
上等だ。
――王女さま――
おれ信じるから。
どうか、どうか!
虎と町田をよろしくお願いします。
おれは、あんたにかばわれるほどキレイな男じゃないけど。
もう少しだけ、おれといてくれよ。
おれはヤツをぶちのめす方法を考えるわけじゃない。
虎を自由にする方法を考えるだけだから。
「ぇっ、ぇっ、ぇっ」
「応えろ! どのくらいこのアホを、のさばらせてんだ!」
怒りで足が出た。
おれはかわいそうな弟の身体を蹴った。
ひとりで死にたいほどの絶望を抱えてきた、かわいそうな、まぬけ。
「虎っ。虎…っ」
でも泣いてくれたから。
これからはどれほど傷つけても、きちんと抱きしめてやれる。
おれが両腕を差し出すと、虎は素直に腕の中に入ってきた。
「ぅわぁぁぁあああああ――ん」
「うん…、うん…」
赤ん坊の頃から泣けばそうしてやったように、頭をなでた。
どうしたら仕返しができるか。
〔親がいるので出られません明日なら〕
虎の代わりに返信しながら、頭のなかを渦巻いていたドス黒い暴力の衝動は根性で消す。
おれが汚れたら、虎が泣けない。
王女さんが虎に届かない。
「兄ちゃん……、にぃ、ちゃ…ん」
しがみついてくる虎をあやしながら、そのメールを受け取った。
〔だったら数学のペーパーも仕上げてこいよ 2時に駅〕
上等だ。
――王女さま――
おれ信じるから。
どうか、どうか!
虎と町田をよろしくお願いします。
おれは、あんたにかばわれるほどキレイな男じゃないけど。
もう少しだけ、おれといてくれよ。
おれはヤツをぶちのめす方法を考えるわけじゃない。
虎を自由にする方法を考えるだけだから。