真夜中のサイコパス
(木村菜々子だ……。

あんなところでスマホを見てなにをしているの?

もしかして拓実君とラインとか……)


私は木村菜々子みたいにかわいくもなければ、人気もない。


私は平凡で取り柄がないけど、木村菜々子はまるで選ばれた人間のように、たくさんの魅力に溢れている。


私がどんなに努力してみても絶対に木村菜々子に勝てるはずがない。


だから私は木村菜々子を見ると、嫉妬心ばかりが沸き上がってくる。


私と木村菜々子は同じ高校一年生なのに、どうしてこんなにも差があるのだろうって……。


私は木村菜々子に少しも勝てない悔しさから、木村菜々子の背中をにらんだが、もちろん、木村菜々子にはなんの罪もないことはわかっていた。


私は自分の醜い嫉妬心から目をそらし、木村菜々子が近くにいる階段を降りて帰ろうと思っていた。


私がいくら木村菜々子に嫉妬しても、拓実の特別な人になることには近づけないのだ。


私は自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと階段の方へと歩き出した。


でもそのとき、私の頭の中で浜中美澄の声が聞こえていた。
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