真夜中のサイコパス
「咲良、待ってて。

私がなにがあったのかを聞いてくるから」


優子はそう言って笑うと、ウワサ話をしている人達の輪の中に入っていった。


私はそんな優子の様子をドキドキしながら見つめていた。


(優子が麻衣と話している……。

麻衣はもう昨日の事件を知っているのかな?

木村菜々子って、あれからどうなったのだろう?

誰かが病院に連れていってあげたの?)


優子と麻衣がなにを話しているかが気になった。


だって、クラスのアイドルである木村菜々子が、階段から突き落とされてケガをしたなんて、みんなが興味を持つはずの大事件だから。


そのことを考えていると、息が苦しくなってきて、胸がドキドキして止まらなくなってくる。


私が過度のストレスから吐き気を感じていたとき、麻衣との会話を終えた優子が私のところに帰ってきていた。


だけど、優子の表情はさっきまでみたいに笑顔ではなかった。


なにかを考えながら歩いている優子の表情は、明らかに険しくなっていた。


そして優子は私の前に再び立つと、ゆっくりと口を開いて、私に話しかけてきた。


「なにがあったかわかったよ。

木村菜々子が別校舎の二階の階段から誰かに突き落とされてケガをしたんだって」


そう言って、私を見ている優子の目線が怖かった。


優子の目がまるでなにかを見透かしているみたいに感じたから。


私は不安の中でぎこちなく笑い、優子に言葉を返していた。
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