真夜中のサイコパス
「そうなんだ……。

大変な事件があったんだね。

だけど、なんでそんな事件が起きたんだろう」


「木村菜々子は階段の踊場で頭から血を流して倒れていたんだって。

それを公江が見つけたみたい。

公江は昨日までに提出しなくちゃならない絵を美術室で描いていたから」


私は優子の話を聞きながら、胃がキリキリと痛み出した。


昨日、美術実に残って絵を描いていたのは、私と公江と真理の三人だ。


つまり、私があの事件を起こしてから数分後、絵を描き終えて美術室から出てきた公江が階段の踊場で倒れている木村菜々子を発見したのだ。


そして、同じくらいの時間に同じ場所を私が通ったことに優子は気づいている。


私は優子がその事実をスルーしてくれることを願った。


そしたら私は今まで通り、優子の前で笑っていられるから。


でも、私の思いとは裏腹に、優子は事件の核心をつくことを私に聞いてきた。


「昨日、咲良も美術室に残っていたよね。

咲良はさ、階段の踊場で倒れている木村菜々子を見なかったの?」


私は優子のその言葉にドキドキしていた。


もちろん私は階段の踊場で倒れている木村菜々子を見ている。


だって木村菜々子を階段から突き落としたのは私だから。


でも、そんなことは口が裂けても言えなかった。


私は頭の中で優子への言いわけを必死になって考えていた。
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