真夜中のサイコパス
「私、木村菜々子なんて見なかったよ。

きっと私が帰ったときは、まだその事件が起きてなかったんだよ。

私が帰って、公江が木村菜々子を見つけるまで。

その間にきっと事件は起きたんだよ」


「それじゃ、事件を起こした犯人はどこから出てきたんだろうね。

別校舎の二階には美術室と理科室と音楽室しかないのに」


「それは……、きっと犯人がどこかに隠れていたんだと思う。

もしかしたら犯人は、最初から木村菜々子を狙っていたのかもしれない。

そう考えたら、つじつまが合うかも」


「確かに、そんな可能性もあるね」


優子は真顔でそうつぶやいて、私の目を見つめていた。


「木村菜々子はさ、脳震盪を起こして、意識を失っていたんだって。

だから今日は大事を取って、学校を休んだんだよ。

一歩間違えば、木村菜々子は大変なことになっていたかもしれない。

これはそれくらいに悪質な事件なんだよ」


優子の言葉が私を責めているみたいで嫌だった。


いつも私の味方だったはずの優子が、今日だけは敵に見える。


今が私の一番つらいときなのに……。


今が一番、優子に味方をして欲しいときなのに……。


私は優子のキツイ言葉をごまかすように、笑いながらこう言った。


「私にそんなことを言われても正直、困るよ。

私だって、木村菜々子がかわいそうだなって思うし、犯人も早く見つかって欲しいと思っているよ」


私が自分を必死に守るためにそう言ったとき、優子が衝撃的なことを口にした。


「ねぇ、咲良……。

咲良は本当にそう思ってる?」
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