真夜中のサイコパス
私は優子のその言葉に体が震えた。


大切な親友が私の言葉を疑っていたから。


(どうしよう……。

優子は私が木村菜々子を階段から突き落としたと思っているの?

私たち、友達なのに。

一番の親友なのに)


私は必死に作り笑いを浮かべて、優子の言葉を否定していた。


「優子、冗談キツイよ。

私は極悪人じゃないんだよ。

私だって、木村菜々子をケガさせて犯人が捕まればいいって思っているよ」


私は私の言葉を聞いた優子の反応を探っていた。


優子に私が犯人だと思われたくないし、できるならもうこの会話を止めにしたい。


私は木村菜々子の事件と無関係を装い、この事件が話題にならなくなるまで、この事件に触れずにいたいのだ。


私だって本当は木村菜々子を傷つけたくはなかった。


木村菜々子を傷つけたのは、私に取りついている浜中美澄だ。


浜中美澄が私の体を支配するから、私はそれに抗えなくて……。


本当のことをすべて口にして、優子に説明ができたならどんなに楽だろう。


だけど、そんなことができるはずもない。


たとえ浜中美澄のせいだとしても、クラスメイトを傷つけてしまった私は、優子と友達でいられなくなる。


私は私の大切なものを守らなくちゃ。


私が私であるために。


私の未来がめちゃくちゃにならないために。
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