真夜中のサイコパス
「みんなには内緒だけど、私はめちゃくちゃ拓実君を意識してるよ。

遠くからでも拓実君の後ろ姿はすぐにわかるし、いろんな人の声に混じっていても、拓実君の声はすぐにわかる。

だけど、拓実君はクラスのアイドルだから、私なんかが意識しててもっていいのかなぁって思っていて……」


私は自分が口にしている言葉に耳を塞ぎたかった。


私が言いたくても絶対に言えないことを、浜中美澄は簡単に話してしまう。


こんなことを拓実に話して本当に恥ずかしい。


私の気持ちなんて、少しも伝えなくていいのに……。


私に取りついている浜中美澄……、お願いだから、勝手なことを話さないで!


「オレがクラスのアイドル?

うれしいこと言ってくれるじゃん」


自分の気持ちを拓実に伝えて、死にたいような気持ちになっている私に、拓実は明るくこう言ってきた。


「まぁ、確かに女子からは人気があるみたいだけどさ、オレもやっぱり相手を選ぶじゃん。

結構、マジメな性格だからさ」


拓実がこんなに親しげに私に話してきたことは、今までない。


拓実がこんなにも私に好意的なのは、浜中美澄に魔力でもあるからだろうか?


平凡な私が拓実と釣り合わないのは、私にだってわかっている。


現実をねじ曲げるような強力な魔法でも使わない限り、私は拓実に選ばれない……。


私がそんなことを思っているとき、私の体を乗っ取っている浜中美澄が、また一番聞きにくいことを拓実に聞いていた。


「拓実君が選ぼうとしてるのって、もしかして木村菜々子?

拓実君と木村菜々子って仲がいいよね」


今度こそは言ってはいけないことを口にしたと思っていた。


なんで私は拓実の気持ちを深掘りするような質問をしているのだろう?


私と拓実はそれができるほど仲良くないのに……。


私はただ、拓実に片想いをしているだけなのに……。
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