真夜中のサイコパス
階段から突き落とされてケガしていた木村菜々子が十日ぶりに学校にやってきた。
木村菜々子は頭に包帯を巻き、顔にも大きなガーゼとテープが貼ってあった。
そんな木村菜々子の姿を見て、痛々しいという言葉が一番先に浮かんできた。
そして木村菜々子にそんな痛々しいケガを負わせたのは、私であり、浜中美澄だ。
それを思うと、私の胸は痛んだが、浜中美澄はそんな木村菜々子に見せつけるように、木村菜々子が思いを寄せる須藤拓実に話しかけていた。
「拓実君、おはよう。
今日も拓実君の顔が見れてうれしい!」
「ああ、そうか。
じゃあ、オレも」
「もうすぐ拓実君の誕生日でしょ。
私、手作りのケーキに挑戦しているんだよ。
拓実君をよろこばせたくて」
「そうなんだ。
ありがとうな」
「私の中では拓実君が一番だからさ。
それでね、いつかは拓実君の一番になりたいと思っているんだよ」
そう言って笑っている私を見て、拓実も楽しそうに笑っていた。
だけど、本当の私は、少しも笑えないし、うれしくもない。
だってこの会話の中に私の言葉はないのだから。
私は浜中美澄みたいにあざとくない。
拓実に好かれるためだけの会話を選ばない。
私と楽しそうに話している私を見て、木村菜々子がにらんでいた。
私には木村菜々子の気持ちが痛いほどにわかる。
あんな地味で目立たない有島咲良が、私が教室にいない間になにしてるの?
あなたが拓実のとなりにいるべきじゃないのに。
拓実のとなりにいるのは私であるはずなのに、って……。
木村菜々子は頭に包帯を巻き、顔にも大きなガーゼとテープが貼ってあった。
そんな木村菜々子の姿を見て、痛々しいという言葉が一番先に浮かんできた。
そして木村菜々子にそんな痛々しいケガを負わせたのは、私であり、浜中美澄だ。
それを思うと、私の胸は痛んだが、浜中美澄はそんな木村菜々子に見せつけるように、木村菜々子が思いを寄せる須藤拓実に話しかけていた。
「拓実君、おはよう。
今日も拓実君の顔が見れてうれしい!」
「ああ、そうか。
じゃあ、オレも」
「もうすぐ拓実君の誕生日でしょ。
私、手作りのケーキに挑戦しているんだよ。
拓実君をよろこばせたくて」
「そうなんだ。
ありがとうな」
「私の中では拓実君が一番だからさ。
それでね、いつかは拓実君の一番になりたいと思っているんだよ」
そう言って笑っている私を見て、拓実も楽しそうに笑っていた。
だけど、本当の私は、少しも笑えないし、うれしくもない。
だってこの会話の中に私の言葉はないのだから。
私は浜中美澄みたいにあざとくない。
拓実に好かれるためだけの会話を選ばない。
私と楽しそうに話している私を見て、木村菜々子がにらんでいた。
私には木村菜々子の気持ちが痛いほどにわかる。
あんな地味で目立たない有島咲良が、私が教室にいない間になにしてるの?
あなたが拓実のとなりにいるべきじゃないのに。
拓実のとなりにいるのは私であるはずなのに、って……。