真夜中のサイコパス
朋子は最近の美澄を見ていて、人は簡単に手のひらを返すということを知った。


学校のアイドルだった美澄にあれほど声をかけてきた男子や美澄と仲良くなりたいと思っていた女子が、美澄の周りから消えたのだ。


朋子はそのことを一度も口にはしなかったが、それを一番感じているのは美澄本人に違いなかった。


美澄が変わったのは見た目だけのはずなのに、美澄の顔にできた火傷の跡のせいで、美澄の人間関係も、美澄の性格も、美澄の将来も、まるで変わってしまったのだ。


朋子から見ても今の美澄はかわいくない。


火傷の跡はやっぱり痛々しくて、美澄を見ていると真っ先にかわいそうという感情が沸いてくる。


ちょっと前までの朋子は、里山高校のアイドル、浜中美澄といつも一緒にいる人という見られ方をしていたけど、今はかわいそうな美澄といつも一緒にいてくれる優しい友達くらいに思われているかもしれなかった。


美澄が学校の人気者だったからこそ、このイメージの落差は大きかった。


美澄は朋子にさらに落ち込んでいるような顔を見せ、さみしそうな声で朋子に言った。


「最近ね、剛志君とも上手くいっていないの。

私のことを好きだって言ってくれていたのに……。

こんなことを思いたくないけど……、私と剛志君はもうダメかもって思っている……」


美澄の彼氏の横峯剛志は、美澄や朋子と同じ一年三組の生徒で、女子から人気のあるイケメンのスポーツマンだ。


朋子は美澄と剛志の関係をずっと羨ましく思っていた。


だけど朋子はそのことを口にせず、その感情をずっと心の中に隠していた。
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