真夜中のサイコパス
美澄が剛志と別れて一ヶ月が過ぎた頃、クラスの中でいつの間にか劇的な変化が起きていた。


それはかつての里山高校のアイドル、浜中美澄が輝きを失った一方で、いつも美澄の影に隠れていた田中朋子の魅力が増したのだ。


朋子は元々かわいらしい女子生徒であったが、美澄との比較の中で平凡な女の子に見られていた。


でも、浜中美澄が少しも輝かない石ころに姿を変えたとき、そのとなりにいた田中朋子が自らの魅力だけでキラキラと輝き出したのだ。


そしてクラス内で自分の評価が変わったことを感じていた朋子は、今まで美澄との比較のせいで、自分が輝けないでいたことを知った。


朋子が美澄と二人でいるとき、男子から声をかけられるのは朋子になった。


朋子はそのことがうれしくて、笑顔で男子に言葉を返すと、朋子の人気は益々上がっていった。


朋子は今までそれほどモテなかったし、もちろん自分が一番になれるなんて思っていなかった。


今までずっと美澄よりも下に見られていた自分のはずなのに、美澄よりも評価が上がると、本当にうれしかったし、美澄の存在が段々と小さく見えてきた。


そんなある日、朋子も想像していなかった驚くべきことが起きた。


美澄の元カレで、朋子がずっと片思いをしていた横峯剛志が美澄に告白してきたのだ。


朋子はそのことに舞い上がり、ちょっと美澄のことが頭の中によぎったけれども、ずっと好きだった剛志の告白を受け入れた。


この瞬間に里山高校の一年三組の主役は美澄から朋子に移ったのだ。


浜中美澄は哀れでかわいそうな女の子になってしまった一方で、田中朋子はキラキラと輝いて、クラスで一番のイケメンである横峯剛志と恋人になったのだから。


朋子は自分が剛志と付き合い始めたことを美澄に言わないでいたが、隠していたその事実はいつの間にか美澄にも伝わっていた。


そしてそのとき、美澄と朋子の仲に亀裂が入った。


美澄は友達だと思っていた朋子に彼氏を取られ、怒りと憎しみを込めて、朋子に強い口調でこう言った。


「朋子って最低だよね。

友達の一番大切にしていたものを横取りしていくんだもん。

朋子って、本当に性格ブスだよ。

みんながそれを知らないだけだよ」


友達だと思っていた美澄に強く罵られた朋子は、美澄に負けないくらいに強い口調で美澄に言い返した。


「私は美澄から剛志君を横取りなんかしてないよ。

顔に火傷の跡を作って、ブスになった美澄が剛志君にフラれただけじゃん。

私がなにかをしたわけじゃない。

剛志君はブスな美澄を嫌いになっただけだから」
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