真夜中のサイコパス
美澄は朋子が一年三組の教室に来る予定の十分前に教室にやってきた。


そして教室の明かりをつけず、暗い教室の隅っこに身を隠すように立っていた。


剛志はサプライズ的なことが大好きで、予期せぬことをときどき仕掛けてくる人だから、教室の明かりがついていなくても朋子は教室に入ってくるに違いなかった。


きっと幸せそうな顔で、この教室に剛志がいると思いながら。


不幸のどん底にいた美澄は朋子の笑顔を想像しただけで、朋子が憎くて仕方がなかった。


ずっと友達でいようって約束したのに、自分を裏切って、剛志とまで付き合い始めた朋子が憎かった。


今の朋子の幸せな姿を見ていると、まるで今までの自分の幸せが全部、朋子に吸い取られてしまったような気がしてくる。


美澄はじっと息を殺し、耳を澄ませながら、朋子が教室に入ってくるのを待っていた。


今日は朋子と決して忘れることのできない思い出を作る日だと、自分自身に言い聞かせながら。


しばらくして、廊下の方からこの教室に近づいてくる足音が聞こえてきた。


美澄はその足音を聞いてニヤリと笑い、右手に持っているナイフを強く握りしめていた。
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