真夜中のサイコパス
(どうして私が美澄に殺されなくちゃいけないの?

美澄の不幸は私のせいなんかじゃないのに……。

美澄は私が剛志君を奪ったって言うけど、それは違う。

剛志君は美澄が嫌いになっただけなんだ。

顔に醜い火傷の跡を作った美澄のことが……)


右足を引きずり、まともに走ることができない朋子が、ようやく昇降口まで逃げてきた。


この昇降口を抜ければ、学校の外だ。


もしかしたら、校庭に部活を終えた男子生徒がいるかもしれない。


そしたら、美澄は人目を恐れて、どこかに行ってくれるかもしれない。


必死に逃げれば、きっと助かる。


学校で美澄に殺されるなんてあり得ない。


なにも悪いことをしていない自分が殺されるなんて……。


朋子が昇降口に着いて、校庭の方に目を向けたとき、そこには部活終わりの野球部員がいた。


朋子はようやく見つけた人の姿によろこび、昇降口から野球部員に必死に助けを求めていた。


「誰か助けて!

助けて! 助けて! 助け……」


大きな声を張り上げていた朋子の背中に、今まで経験したことのない激痛が走った。


そしてその痛みと共に、息もできないほどの苦しさが襲ってきて、朋子は背中にナイフが刺さったまま、うつ伏せに倒れ込んだ。
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