真夜中のサイコパス
(浜中美澄の幽霊が私の体の中に入っていったけど、体調は悪くない。

さっきまでのことって、夢じゃないよね。

浜中美澄の幽霊は本当にいたんだよね)


自分の体の中に入り込んでいった浜中美澄の幽霊のことを思うと、私は不安で息が詰まった。


浜中美澄の幽霊は私に「体をよこせ」と言っていた。


あの言葉の意味ってなんだろう?


私はこれからどうなってしまうのだろう?


私がそんなことを悩んでいるとき、消えてしまっていた教室の蛍光灯がひとりでについて、教室の中がまた明るくなった。


私は明るくなった教室をドキドキしながら見回していたが、教室の中に浜中美澄の幽霊がいる様子はなかった。


「咲良、本当に大丈夫だよね。

咲良の体は浜中美澄の幽霊に乗っ取られていないよね」


優子が心配そうにそう言ってきたので、私は自分の右手を見つめ、ゆっくりと右手を動かしてみた。


(大丈夫……。

私の体は私の意思でちゃんと動く。

きっと心配なんてしなくていいと思う。

私たちは浜中美澄の幽霊を必要以上に怖がっていただけだと思う)


私が自分に言い聞かせるようにそう思っていたとき、優子が明るく弾んだ声でこう言った。


「咲良、教室のドアが開くよ。

さっきまでは開かなかったのに」


優子が教室のドアを開けて、教室からやっと出れると思ったとき、私はホッとして、ドアの方へと歩いていた。
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