真夜中のサイコパス
私はノートに書かれた字をじっと見つめながら、息が苦しくなっていた。


私が寝ていた数時間のうちにこの部屋で、いったいなにが起きたのだろう?


もしかしたら、私の体が私だけのものでなくなっている可能性があるかもしれない。


それに、里山高校の都市伝説のどこまでが真実かもまだ不確かだ。


そんなことを思いながら、私は優子が私に言った言葉を思い出していた。


(咲良、もう一度言うけど、里山高校の都市伝説はハッピーなことばかりじゃないよ。

恋が成就する代わりに、恋敵には不幸が訪れるし、恋が成就した人もその幸せと同じくらいの不幸せが訪れるかもしれないんだからね。

まぁ、等価交換みたいなものだと思うよ。

咲良はそれでもいいんだよね)


私は自分の体が浜中美澄の幽霊に乗っ取られている可能性を考えながら、ゆっくりと自分の右手の指を開いて、閉じた。


そして私は、自分の体が自分の意思でちゃんと動くことを確認すると、少しだけホッとしていた。


ノートに書かれていた文章は本当に不気味だ。


でも、そのことはもう忘れよう。


いくら考えてみても、答えがでないことだから。


私が自分にそう言い聞かせて、乱れていた呼吸を整えていたとき、下の階から母の私を呼ぶ声がまた聞こえてきた。


「咲良、早く降りてきなさい。

お父さんも待っているわよ」
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