真夜中のサイコパス
「有島……。有島……」


数学の武藤先生が私の名前を呼んでいたが、考えごとをしていた私はそのことに気づかなかった。


私が授業を聞かずにぼうっとしていることに気づいた武藤先生は、少し不機嫌そうな顔をすると、大きな声で私を呼んだ。


「おい、有島！

オレの授業はそんなに退屈か？」


私はようやく武藤先生に呼ばれていたことに気づき、慌てて甲高い声で返事をすると、教室内からクスクスと笑いが漏れた。


私はそのことが恥ずかしくて、少しうつむき、顔を赤らめていた。


「考えごとなんてしていないで、ちゃんと授業を聞くように。

有島、前に来てこの問題を解きなさい」


私は武藤先生にそう言われ、黒板まで歩いていくと、簡単な因数分解を解いて席に戻った。


（今日も私はツイていないなぁ。

最近の私には良いことがなにもないよ）


私がそんなことを思いながら、ピンクのシャーペンを手持ち、黒板の文字をノートに書き写そうとすると、突然、体に異変が起きた。


私の右手が勝手に動き出し、自分の意思とは関係なしに、ノートに文字を書き始めたのだ。
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