キミから「好き」と、聞けますように。

「ああっ! さゆきちゃーん!」



向こうから、母性をくすぐる声が聞こえた。



「ん?」



走ってきたのは、水色の浴衣を着た女の子。



「七菜ちゃんじゃない!」



ひながそばで、(はじ)けるような声を上げた。


七菜ちゃんだったのか。浴衣を着ていた上、髪型もいつもと全然違うから一瞬誰なのか分からなかった。

水色の生地に、ピンクの朝顔が咲いたデザイン。

でも、丈が、ひらひらしたスカートみたい。


これ、いわゆる浴衣ドレスってやつだな。

渋すぎることなく、明るい色合いでかわいく着こなせていている。

ハーフアップの結び目についている、水色の花の髪飾りもキュートだ。



「わわー! ひなたちゃんもいるー!」



「そうだよ、七菜ちゃん。こんにちは」



「かんにいに! はやくはやくー!」



後ろにいる東條くんに、手招きをする七菜ちゃん。



「少し待てよー、ったく……」



後ろから、声が聞こえてきて案の定東條くんが近づいてきた。
東條くんは、浴衣じゃないんだね。




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