キミから「好き」と、聞けますように。

「七菜ちゃん、何か食べたのー?」



「えーっとねぇ、チョコバナナたべたんだよ! おいしくてすぐなくなっちゃったんだ!」



夏祭りを満喫している気持ちが止まらないのか、七菜ちゃんはそう言いながらウサギみたいにぴょんぴょん跳ねている。


可愛いなぁ。


でも、こんなに元気で体力があり余っているみたいだから、付き添ってあげている東條くんは大変みたい。

呆れた表情で、七菜ちゃんのことを見つめている。



「東條くんは、何か食べた?」



「え、俺!?」



話を振られると思っていなかったのか、東條くんはどことなくしどろもどろだ。



「あっ……。七菜ちゃんに付き添いで、大変そうだし、何も食べてないのかなってちょっと思っちゃって」



話を振るのがいきなりすぎたかもしれないので、わたしはそうつけたした。


『思っちゃって』じゃなくて、『心配になっちゃった』と言うことができれば、どれだけ良かったことか。


なんで、わたしってこんなにも消極的なんだろう。



「あ、あぁ……。まあ、あそこにポテトの屋台あったから、それ買って食べたよ」



わたしの話の振り方が悪かったのか、なんだか東條くん、決まり悪そう。


心の中で深いため息をつく。


東條くん、コミュニケーションってものがまともにできなくてごめんなさい。




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