キミから「好き」と、聞けますように。
文化祭の係決めの時。
わたしは、ひなの推薦でドーナツやケーキといったスイーツを作る係となった。
その日の放課後は残り、わたしは調理室を借りて作ったスイーツを、クラスの子に試食してもらうことになった。
「うーん、紗雪のドーナツおいしー!」
ひなが、いちごジャムのドーナツを頬張り、ほっぺを手で押さえながら悶えた。
「温森さんってスイーツ作り上手だったんだねー」
「女子力高ーい!」
「このスコーンなんて、お店で食べたやつみたいだよ」
クラスの子達の声が、次々に上がる。
「温森ってすげーな」
東條くんも、ブルーベリーを練り込んだチーズケーキを食べながらそう言った。
「えっ? いや、そんな……」
「だってさ、歌もうまいし、こうやって菓子作るのもうまいし、才能ありすぎだろ」
こんなに褒められるなんて思わなかった。
歌が上手かったり、お菓子作りが上手な人はたくさんいるし、それに加えて他にもいろいろなことができる人っているもの。
わたしのは、別に才能ってものじゃないよ。
「そ、そんなことないよ!? わたし、お菓子作りなんてお母さんとクレープ焼くのが好きって理由で、ホットケーキミックスを使ったやつしかできないし……」
思わず、手を振りながら否定したわたし。
好きってだけで、絶対にずば抜けてすごいってわけじゃないんだ。