キミから「好き」と、聞けますように。
大沼くんが走り去った後、わたしはそこでぼうっと立ち尽くしてしまった。
コツ、コツ、と足音が聞こえてきて、顔を上げると思わずヒッと息を呑んでしまった。
あの、わたしをよく睨みつけていたショートカットにした、ボーイッシュの女の子だった。
確か、名前はミノリちゃんだったっけ。
ミノリちゃんは、何も喋ろうとしない。
「あの、そのっ……」
「うちの、元カレがご迷惑をおかけしました」
わたしが何か喋ろうとすると、彼女が急に律儀な態度で頭を下げてきた。
「もっ……元カレ?」
「戸田 幸之助のことです」
「え……? あなた、戸田くんの元カノなの……?」
「はい」
思わず、目をパチパチと瞬きをする。
戸田くんって、付き合っていた彼女がいたんだ。
まあ、できてもおかしくはないかもしれない。
だって戸田くん、体は大きいし、運動だってできるし。
もしかしてあの時、ミノリちゃんがわたしを睨んでいたのも、戸田くんがわたしに話しかけてきたからなだけ……?
でも、今は元カノだって言っているから別れたことは確かだし。
一体、2人はいつ別れたの……?