キミから「好き」と、聞けますように。
東條くんには……耳に障害のある幼なじみがいるからなんだ。
だから、言葉を聞き取りづらいわたしにも優しいんだ。
支援してもらえないから優しくしてもらってたのかな?
わたしが期待したからだ。
期待なんかしなけりゃ、こんな結末にはならなかった。
これが、現実なんだ……。
感情に任せていると、わたしは買う予定だったピンクのネイルチップを元の場所に戻して、お店を出ては走り去っていった。
「ちょっと紗雪ちゃん! どうしたの!?」
紫杏ちゃんが後ろで叫んでいるけれど、わたしは脇目も振らずにその場を離れた。
「ふぅ……!」
わたしは、そのまま1人で走り去った。
『紗雪? 先に帰ったの?』
ひなからメールが来ていたけれど、わたしには返す余裕が残っていなかった。