キミから「好き」と、聞けますように。
わたしが聞き取れなかったときに、『滑舌が悪い』と言って、謝ってくれた東條くん。
わたしが鈴李さんの歌詞をメモ帳に書いていた時に、興味がありそうに話しかけてくれた東條くん。
カラオケでわたしが歌を歌うと、上手いと誉めてくれた東條くん。
その後も……。
文化祭の準備をしていた時も、わたしの手作りスイーツを褒めてくれた。
どんなに心ないことを戸田くんから言われても、わたしを庇い続けてくれた。
『東條くんが優しくしてくれたのは、紗雪が思っているより、言葉を聞き取りにくいっていうのは関係ないんじゃない?』
確かに、歌やスイーツは全然聴覚情報処理障害とは関係がない。
『東條くんは、紗雪の長所や才能をよく分かってくれてるじゃない』
「う、うん……」
『紫杏ちゃんのことで、不安にはなっていると思うけれど、希望は捨てないでおこう? ね?』
「う、うん……」
ひなの言葉は、間違っていない。
ひなはわたしに希望を与えようと頑張ってくれた気持ちは充分に伝わった(と思う)。
でも、やっぱり自信がない……。
本当に、これでいいのかな。
紫杏ちゃんのことも気にせず、東條くんに対する希望なんか抱いていいのかな。