キミから「好き」と、聞けますように。
「温森?」
ざわざわと話す声の中。
わたしを呼ぶ、あの人の声が耳に飛び込んだ。
顔を上げると、途端に少しだけ、その人の顔が滲んだ。
「とう、じょう……くん」
その名前を呼んだ瞬間、わたしの目からあったかい粒が落ちたけれど、すぐに雪と一緒に落ちていった。
「東條くんも……鈴李さんのライブ来てたの……?」
「いや、俺は別に……。ライブに参戦したわけじゃないんだけどさ……」
東條くんは、一瞬そっぽを向いたけれどまたわたしの方を見た。
「ここに来れば、いるような気がしたから、ついな」
東條くん、わたしのことを探してくれてたの……?
一体いつから外にいたんだろう。
結構長時間いたんじゃないかな。
頬が、赤い。
でも、だとしたらどうしてそんな状態になるまでわたしに会おうとしてくれたの?
頼むからもう、希望なんて持たせないで。
思わせぶりな態度、とらないで。
好きにさせないで。
キミのことを好きになればなるほど、わたしの心には苦しみがどんどん侵入してくるから。