キミから「好き」と、聞けますように。
「本当、鈴李のこと、好きなんだな」
東條くんの優しい微笑みが、見ていてなんとなく寂しそうに感じた。
「うん……」
鈴李さんはわたしの推しだからね、とか、好きだよ、とか。
心の中だったら言えるのに、言おうとする気持ちに何かがチクチクと苦しいものが邪魔してきて、言葉を発せない。
好きなんだな、か。
そう、好きなんだよ。
そりゃ鈴李さんもそうだけど、何よりわたしは、キミが好き。
好き、なのに。
「じゃあ、お母さんが心配しちゃうからわたしもう帰らなきゃ! 東條くんも気をつけてね、じゃあね!」
やっとの思いで、言葉を発することができたのに。
違う。
言いたいのは、この言葉じゃないのに。
足は、どんどんキミから遠ざかってしまう。
だんだん冷えてきてしまった手よりも、心の方がずっと冷たかった。
目からこぼれ出た、小さくてあたたかいものを決して見せまいと、わたしはフードをかぶって、その場を去った。