キミから「好き」と、聞けますように。

寛太side


温森と会ってから、数日が経った。

あの時、逃げるように帰られた後、俺はすぐに帰れず、ただただ温森の帰っていった方を見続けるしかなかった。

あの時の温森は、涙声で帰る時にいきなりフードなんかかぶって顔を見せないようにして、何かあったのだろうかと、もんもんと考え続けてしまった。


風邪気味で、鼻水が出てしまったわけではなさそうだったし……。

そんな温森に、どうしようかと思い、俺は紫杏に相談してみることにしたら、紫杏は俺んちまで来ると言ってくれた。



「寛太ー!」



七菜がアメと遊んでいるところを眺めていると、母さんが受付台のあたりで叫びながら俺を呼んだ。



「なんだよ母さん」



「紫杏ちゃんが来てくれたわよ」



外を見てみると、母さんの言う通り紫杏が立っていた。
紫杏は、俺の顔を見ると不愉快そうに唇を尖らせた。



「で? 相談って言うのは、何? 紗雪ちゃんと何があったの?」



家にあげると、紫杏はいつもと変わらない声のトーンで言った。



「え、温森?」



紫杏の方から、温森の名前が出てくるなんて思わなかった。



「え、違うの?」



「いや……」



違わないけど、なんで紫杏はそんなに俺を知っているんだ?



「あのさ、会ったんだって?」



紫杏が、眉を(ひそ)めながら尋ねてきた。




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