キミから「好き」と、聞けますように。
「え?」
「紗雪ちゃんに、会ったんだって?」
「な、なんで知ってんだよ……」
俺は、思わず怯んでしまった。
俺はあの時、温森に会ったことなんて誰にも言っていないはずだ。
もしかして俺が知らない間に、温森が紫杏に話したのか?
「陽向ちゃんから、メールで聞いたからっ」
「長嶺?」
長嶺は、紫杏と知り合ってからそこまで月日は経っていないと思うんだが。
なんでもう、メアドなんか交換してあるんだろう。
じゃあ、温森が長嶺に話して、そして紫杏にまで話が行ったということなのか。
俺の知らない間に、いろいろと話がスムーズに進むもんだから、こういう時は本当に女は恐ろしい生き物だなと思ってしまう。
「……できればこんな話したくなかったんだけど」
紫杏は、切なそうな表情を見せた。
下に垂れている手が、スカートをギュッと握っている。
「聞きたいことがあるの」
「なんだよ」
「好きなの?」
「……え?」
「紗雪ちゃんのこと、好き?」