キミから「好き」と、聞けますように。
俺はドキリとした。
思いもよらない質問だった。
「なんでお前っ……」
「そりゃ分かるよ。いつだって紗雪ちゃんのこと思ってたでしょ。寛太って、ほんと分かりやすいんだから」
そういえば、振り返ってみれば俺は温森の話をよく出している。
幼なじみの紫杏には、そんなことまでバレてしまっていたのか。
「それで、紗雪ちゃんに急に逃げられたんでしょ」
「あっ……うん」
「もしかして、その理由が知りたいとか、何か気に障るようなことをしたのならどうしたらいいか分かんないから、あたしに相談持ちかけたってこと?」
紫杏は、俺の心を何かで透かして見たのかと言いたくなるくらい察していた。
「まぁ……」
「ねぇ寛太。自分がバカなことしてるって分かってる?」
紫杏は、急に俺を睨むような表情で言った。
「あたし、紗雪ちゃんじゃないの」
さっきよりも、強い口調だった。
「本人に聞けばいいじゃない」
「だけど……あんなふうに避けられたってことは、俺、何か温森に癪に障るようなことしたんじゃないかって思うと……」
自分でも、情けないと分かっている。
だからこそ、何をしてでも温森に何かしてやりたいという気持ちでいっぱいだった。
「口だけじゃ無理ってこと?」
俺は黙って頷いた。
「何かしてあげたいの?」
再び、黙って頷く俺。
「ついてきて」
紫杏は急に玄関で靴を履き、俺もその後を追った。