キミから「好き」と、聞けますように。

「俺は、温森のことが好きで好きで、なんとしてでも喜ぶことをしたいあまりに買ったんだよ」



わたしの喜ぶことをしたいあまり……。

わたしは、思わずそのネイルチップが入った袋を胸の辺りで抱きしめた。



「ありがとう、東條くん」



わたしがそう言うと、東條くんはさっきまでとんがっていた唇が、ふっと微笑んだ。



「もう俺の気持ちは分かったな、紗雪」



さゆき……!



「い、今……。東條くん……」



聞き間違いじゃ、ないよね?



「ほら、紗雪も。“東條くん”じゃなくて」



「えっと……」



わたしも、呼ぼう。



「かん……た」



わたしの唇が、彼の下の名前を放った。



「寛太!」



くすぐったい気持ちが、わたしを包んだ。




< 158 / 183 >

この作品をシェア

pagetop