キミから「好き」と、聞けますように。
俺は紗雪が、ベンチに座り込んでいるのを見つけた。
「ああ、おーい、紗雪!」
俺が紗雪に手を振ると、紗雪はゆっくりと顔を上げて俺と目を合わせる。
……嫌な予感がした。紗雪の茶色い瞳に、光がない。
とっさに立ったと思ったら、紗雪はくるりと背を向けて走り去った。
「紗雪……ちょっと待てよ!」
紗雪は、まるで操り人形のようだった。
俺以外の誰かに、操られているように俺の声を耳に入れない。
「え? 紗雪?」
俺がこんがらがっている間にも、紗雪の姿はどんどん小さくなっていく。
「紗雪!」
どんなに呼んでも、紗雪は俺を振り向いてくれることはなかった。