キミから「好き」と、聞けますように。
あれから俺は、紗雪に追いつくことは叶わなかった。
紗雪にメールを送っても何も返ってこないし、電話にでも出ない。
翌日、学校に行っても俺に対しては全く見向きもしない。
こうなったら、残された手段としては、あいつに聞くしかなさそうだな。
「なぁ、長嶺」
「何?」
俺は、机の中の整理をしている長嶺に声をかけた。
長嶺は顔を上げず、整理を続けている。
「紗雪に、何があったんだ?」
「え、紗雪? そんなの、本人に聞けばいいじゃない」
「いや、避けられてる感じして……」
「ふーん」
そう相槌を打ってから、長嶺は手を止めて俺の顔を見た。
「まあ、わたしは知らないこともないけど?」
「じゃ……じゃあ教えてくれよ。俺、紗雪に何したんだ?」
「……ミノリちゃん」
長嶺が一息ついてから放った名前は、それだった。
「え?」
「紗雪。東條くんが、ミノリちゃんって子と一緒に過ごしてて気になったんだって」
ミノリって、土井川のことだろう。
「紗雪……すごい不安そうだったよ。バレンタインのクレープ作って、東條くん探して見つかったと思ったら、ミノリちゃんと過ごしてたもんだから」