キミから「好き」と、聞けますように。
卒業式が終わり、わたしは校門を出た。
少し立ち止まって、学校を見上げる。
明日からは、わたしはこの高校に来ないんだなぁ。
3年間通って、楽しい日々を過ごして時には悩んだ。
それでも、やっぱり高校に通えて本当に良かった。
風がふわっとなびいて、春色に輝く桜の花びらが空の中で踊った。
「寛太」
わたしは、近くで立っている寛太に声をかけた。
「……っ!」
ドキリとした。
寛太が、なぜかわたしを睨みつけているからだ。
「えっ……どしたの?」
「紗雪。卒業式の前に、あいつらに呼ばれてたのはなんだったの?」
「あいつらって……」
「田中と橋本」
寛太、見てたの……!?
「あぁ……実は、告白されちゃって……」
「まさかあの2人同時に!?」
寛太もびっくりしたのか、大声で尋ねてきた。
「う、うん……」
「紗雪、なんて言ったの?」
「もちろん付き合えませんって答えたけど?」
「よし」
わたしの答えに、満足したような表情で寛太は頭を撫でてきた。
思わず、ぷくーっと頬を膨らますわたし。
「もうっ……! 寛太がいるのに、オッケーする訳がないでしょ!」
わたしがじとっとした視線を送ると、寛太はブッと吹き出した。
「すっげー顔してんぞ」
堪えきれなくて、わたしも怒った顔から笑った顔に変わってしまった。
わたし達はその場で、2人の笑い声を響かせた。