キミから「好き」と、聞けますように。
寛太side
まるで、鈴かな、と思う。
声は、鈴。
鈴のように、きれいで儚い声をしている。
それが今、俺の隣の席にいる、温森 紗雪。
そんな温森は、鈴李を推してるらしい。
ギターの弾き語りがむっちゃ上手くて、俺も時々聴くんだけど、まさか温森も鈴李が好きだなんて思わなかった。
しかも、温森は歌詞を自分用のノートに書き込んでいるし。
鈴李への推し愛ってやつが、強いなぁと思ってしまった。
極度のめんどくさがりな俺だったら、多分書きかけのところで、『やっぱやーめた』と思いながら、その後はほったらかしにしているに違いない。
「自分で歌えるようにしたいなら、自分で書いたりした方が覚えるんじゃないかなって思って。テスト勉強も、書かないと覚えるの難しいじゃない?」
「テスト勉強とか、ヤな単語出すなよなー全く」
「ふふっ、ごめん」
温森は、鈴が音を立てたような笑い声を立てた。
なんだかんだ、初めてかもしれない。
温森の笑った姿を、こんな近くで見るのは。
いっつも親友でダンス部の、長嶺 陽葵と一緒にいる時に笑っているんだけど、それ以外で笑った顔なんて見なかったかもしれない。